製造業者におけるデジタル化でやるべきこととは?

システムエンジニアとして勤務していると、ここ数年、原材料の価格が高騰したり、求人を出してもなかなか人材が集まらなかったり、エンドユーザーや元請け業者だったりからの要求で、製造業者はデジタル化で生産性をどんどん上げる必要に迫られているという印象があります。

とはいえ、中小製造業を営む会社の社長にとって、ITはそれほど馴染みもなく、

「IT化が必要なのはわかるんだが、どんな場面や工程でITをすればいいのか分からない」

というご意見も、お客様からはよく聞かれます。

そこで、今回は製造業者、特に中小製造業者がIT化を進める上で、どんな場面で取り組めばいいのかや、IT化に取り組む場合のポイントについて解説したいと思います。

目次

日本の中小製造業におけるIT化の潮流

僕自身、システムエンジニアとしての経験から、昨今の中小製造業や工場でのIT化は、大きく、以下のような流れがあるようにかんじます

スマート工場の導入

生産性を向上しないといけなかったり、コストを削減しないといけなかったり、またまた人員不足を解消させないといけなかったり、、、。こんな目的から、中小製造業者はスマート工場技術を導入が進められています。

とは言っても、中小企業においては、工場全体のスマート化はなかなか難しいようですね。なので、全体ではなく、部分的に、機械装置とPCを繋ぐIoT技術の導入、AIによる画像認識、溶接などの一部の工程のロボット化などが多いようです。

データの管理と蓄積

生産管理システムを思い切って導入して、製造工程の見える化だったり、データの一元管理を可能することも、わりと流行っているように感じます。

生産管理システムを導入すると、「不良品が削減できた!」といった意見もお客様の社長からお聞かせいただくなど、品質管理といった側面からも、データの管理だったり、蓄積だったりを行えるシステム面での環境が構築されてきています。

この点に関しても、中小製造業では、むちゃくちゃ高度な分析技術を導入する、ということよりも、その工場にとって最も重要な工程で、継続的にデータを確認して、何か不具合や不調がないかを、社長だったり、管理者だったりがデータから確認するということが多いようです。

ペーパーレス化とクラウドサービスの利用増加

設計書、図面、仕様書などの資料をペーパーレス化する流れは、ここ数年、工場でも、ものすごくたくさん感じられます。

でも、ペーパーレス化をすすめて、作成したPDFなどなどの電子ファイルも、事務所のパソコンの中に保存しているだけでは、事務所内の効率化にはつながりませんよね(汗)

なので、出張中や外出先でも使いやすいように、保存先をクラウドで管理する傾向が強まっているようです。

セキュリティ対策

クラウドやIoT化などのデジタル技術の導入に伴い、セキュリティリスクも高くなってるので、やっぱり、工場においても、社長さんはこの点に気を配られていることがおおいですね。

このため、外部からのアクセスの遮断等のセキュリティ対策についても、ニーズは高まっていて、当社へのこの点でのご依頼も最近とっても多くなっています。また、お客様から頂いた機密情報を社員が持ち出ししないように、持ち出しの対策として、ファイルの閲覧権限やUSBメモリの利用の禁止などの設定をすることも、かなり増えていますね。

人材育成とスキルアップ

技術的な進歩に伴って、デジタル技術の導入と同時に、従業員のデジタル面でのスキルアップも、なかなか社長が頭を抱える点だと思います。だって、デジタル技術はお金を出せば買えますが、人材はそうはいきませんからね。機械が新しくなれば、当然、それを操る人材も、スキルアップが必要なのですが、なかなか中小企業ではそれができない、というのが現状なんじゃないでしょうか。

とりあえず、身近なところで、3DCADやCAD/CAMなどのデジタル製造設備の導入と一緒に、ソフトウェア企業に一緒に従業員へ、ツールの使い方の研修や教育プログラムを進める、ということはよくやられていますね。

工場のどこからIT化を進めればいいのか?

ここまでの解説から、「では、我が社では一体どこから工場のIT化を進めればいいのか?」といった疑問が出てくると思います。これについては、それぞれの工場において、千差万別です。

上で説明したIT化の潮流などを参考に社長や従業員の意見で進められてもいいと思います。

また、会社にとって、どの工程や作業がボトルネックとなっているのか、その課題を洗い出してみるのも一つの手だと思います。

IT化を進めるべき工程を洗い出すために、以下のような流れでボトルネック工程の洗い出しを実施するといいでしょう。

IT化を進めるべき工程を洗い出す手順

手順1:工程のフロー図を作成する:

まず、工場の全工程を図に落とし込んでみてください。
工程の個数としては、5〜10個程度でいいでしょう。

手順2:工程毎の数値化:

各工程の数値を記入します。正確な数値がなければサンプリングでも構いません。
例えば、代表的な製品を1台作成する場合の、時間やコストや不良品数や歩留まり率などが該当します。

手順3:ボトルネックの特定:

収集したデータから、生産の遅延、品質の問題などが発生している工程を特定します。
ボトルネックは、生産フローの中で最も遅い工程や効率の悪い工程のため、全体の生産活動に影響を与える要因です。

手順4:原因分析:

ボトルネックの原因を分析します。これには設備の不具合、スキルの不足、プロセスの非効率性、材料の遅延などが考えられます。原因を正確に理解することが、解決策の策定に不可欠です。

手順5:IT化の検討:

ボトルネックの原因に応じて、適切なIT化を検討しましょう。ソフトウェアを入れればいいのか、
人員に対してEラーニングを導入すればいいのか、センサーなどによる監視システムを導入すればいいのか、
あるいはIT化が問題解決に寄与しないのか、などです。
必要に応じて、知り合いのIT業者などに、アドバイスの依頼をしてみてもいいでしょう。

手順5:導入の検討:

本格的なIT化を導入する前に、ソフトウェアのトライアル導入などがあればやってみましょう。
また、システム構築する場合は目標設定を行います。

中小製造業者がIT化を進める際に注意すべきポイント

ここまでの解説しましたが、読者の方でなかなか普段からITに馴染みのない場合は、IT化を進めるといっても、実際にはさまざまな場面で、戸惑うこともあると思います。

そのような場合、以下の点で特に注意を行い進めていただければいいと思います。

まずは計画づくりから:

盲目的に最新技術を導入するのではなく、あなたの工場の目標と整合する現実的な計画を立てることが重要です。
どの技術が企業の目標達成に貢献するかを検討し、優先順位を設定してください。

コストとリターンのバランス:

先ほどのフロー図とボトルネック工程で、工程毎に数値化ができていると思います。
おおよそでいいので、IT化を行うことで、ボトルネックがどれくらい解消されるのか、試算してみてください。
そして、その改善の効果とコストが見合っているのか、検証してみるといいでしょう。

従業員が使ってくれるか?:

新しい技術を導入しても従業員が使ってもらえなければ、役に立ちませんね。
導入前にきちんと従業員へのヒアリングを行い、また、導入後のトレーニングやサポートについての確かめておきましょう。

セキュリティ対策:

デジタル化にはセキュリティリスクが伴います。データ保護やサイバーセキュリティ対策も一緒に導入する必要があります。

カスタマイズ可能か?:

IT導入段階で欲しい機能を全て洗い出すことは不可能です。
そのため、どうしても使っていて、「やっぱりこの機能が欲しい」ということはよくあります。
導入後に、そのようなカスタマイズが可能かどうかも検討する必要があります。

パートナーとして相応しいか:

導入する機器を販売する業者はあなたの会社にとって長きにわたってお付き合いするパートナー企業となります。
本当に信頼できるパートナー企業なのかについても、人柄、対応力、専門性、法人としての経営力など、精査する必要があります。

これらのポイントを考慮し、あなたの工場でも、ぜひIT化による生産性の向上を進めていただければと思います。

また、当社でも無料のIT相談もお受けし、開発のご依頼も全国にてお受けしております。お気軽に、ご相談ください。

この記事を書いた人

㈱スクラムソフトウェアの製造業DX担当。エンジニアとしてから製造業のシステム開発をメインに幅広く業務に従事。C言語、C++言語を使った組み込み開発やPHPやJavascriptを使ったWEB周りの開発が得意。社内の事例を他のエンジニアからヒアリングし、社外向けにシステム開発と製造業DXや工場管理についての情報発信を実施中

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