製造業におけるDX

皆さんこんにちは!㈱スクラムソフトウェアの製造業DX担当.Aです。今回は月2回の当社で実施している「製造業DX勉強会」で触れた「製造業におけるDX」についてお伝えしたいと思います。
最近よく聞くDXって何?
最近、DXという言葉をよく耳にすると思います。DXは「デジタルトランスメーション」の略語です。なんとなくデジタル化することという認識をお持ちに方も多いと思います。
日本におけるDXの定義は、経済産業省が2020年に策定した「デジタルガバナンス・コード2.0」でも示している、次の定義の意味で用いられることがほとんどでしょう。(1.0で作成、2.0で改訂)
DXの定義・・・
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
経済産業省「デジタルガバナンスコード2.0」2020年策定
このDXの定義を超意訳すれば、おおむね以下のように再定義できます。
当サイトにおけるDXの再定義・・・
「デジタル化を進めた結果・・・企業内に良い変化が生まれること」
製造業DXとオフィスワークDXの違い
製造業におけるDXは、通常の事務作業やオフィスワークに関するDXとは別の、生産現場に特化したDXという文脈で使われることがほとんどです。
例えば、オフィスワークのDXの典型例を挙げると以下になります。
コミュニケーションツールの導入・・・ChatWork・Slack・グループLINEといった文章上のコミュニケーションツールや、ZoomなどのWEB会議ツールを利用することで、対面や電話などを用いずに社内メンバーや協力企業・顧客とコミュニケーションをとる。
クラウドによる文章管理・・・これまで紙を出力し管理していたものを、Microsoft OneDrive、GoogleDrive、Dropboxなどのクラウド上の文書管理で保管することで、ペーパーレス化を実現する。
事務作業の自動化・・・RPA(ロボティックプロセスオートメーション、Robotic Process Automation)というツールを用い、PCを使った毎回操作手順が同じ単純な作業(エクセルデータをCSV保存する、定型分のメールを送信する、特定のフォルダ内のファイルをプリントアウトする・・・等)に対して、マウスやキーボードの操作をRPAに記憶させ、作業を自動化させる。
カスタマーサポートの自動化・・・チャットボットや自動応答メールを用い、顧客からの問い合わせに対して24時間対応を実現させる
ビッグデータの解析・・・大量の顧客データを分析することで顧客別におすすめアイテム情報を提供することや、注文データを分析することで将来どれくらい注文が来るかといった需要予測を行い仕入れ量を予測するなど。
これに対して、製造業DXは、工場内の機械装置に対するデジタル化に特化したDXの取り組みという文脈で紹介されることがほとんどです。以下に、中小製造業におけるDXの典型的なパターンを示してみます。
中小製造業DXのパターン1:工場内の見える化
中小製造業では、工場内や生産工程で何が行われているのかは、現場に入り目で見て確認するしか方法がないことが多々あります。このような状況に対して、「今、製品はどの工程でどの状態で流れている」というように、生産工程で何が行われているのかをPCやタブレットを用いて見える化することは製造業DXの典型例の一つです。これにより、外回りや営業で忙しい中小製造業の社長も現場にいなくとも製品の進捗状況を把握することが可能なため、顧客からの問い合わせや現場の指示も的確に対応することが可能となります。
中小製造業DXのパターン2:機械装置の自動化
従来の中小製造業では、熟練の職人が手作業で旋盤やフライス盤などの工作機械を操作し、精度の高い部品を製造することが、大手製造業者との差別化を図る上で重要な点であったことが長らく続いていました。
しかし、最近では中小製造業者でもITやPC操作に精通し、CAD /CAMを扱えるエンジニアが増えてきました。この結果、これまで熟練の職人でなければ製造できなかった精度の高い金属加工もプログラミングで操作するCNC機器(イメージ)を用いることで、自動で大量生産できることが可能になってきています。
このように、CAD/CAMやCNCを用いたデジタル製造による自動化や省人化も中小製造業者にとっての典型的なDXのパターンと言えます。
3Dプリンターの事例を入れる
中小製造業DXのパターン3:ビッグデータ解析とAI
最近では、ビッグデータの解析やAIを活用し、中小製造業のDXに取り組む事例も増えてきました。例えば、食料品製造業において、弁当の売れ行きがその日の天気・気温・湿度といった気象データによって変化する場合、気象データを変数としたビッグデータから弁当の売れ行きを予測するようなAIモデルを構築することで、需要予測が可能となります。
また、印刷業において、工場内の湿度と温度はインクの状態を左右する重要な変数であり、印刷の品質に影響を与えます。このため、これまでの印刷物における印刷ミスの数と工場内の湿度・温度の関係性をAIによりモデル化することで、印刷ミスが起こりやすい温度と湿度になった場合に、工場内の空調をコントロールすることも可能となります。
このように、工場内で蓄積されるビッグデータをAIにより活用することで、新たな価値を生み出すDXを実現させることも可能です。
中小製造業DXのパターン4:予防保全とメンテナンス
工場内の機械装置にIoTセンサーを組み込むことで、予防保全とメンテナンスの効率化を図ることも可能です。例えば、旋盤に取り付ける刃は定期的に交換する必要があります。もし、摩耗が激しくなった状態の刃を使用し続けると、作業効率の低下や品質の低下につながります。また、摩耗した刃により不慮の事故につながる恐れもあるため、絶対に避けなければなりません。
かといって、摩耗していないにも関わらず、刃を必要以上に交換してしまうと、交換コストや取り替えの手間がかかってしまい、非効率です。
このような場合に、IoT技術を用い旋盤機に振動センサーを取り付け、刃の振動状況をリアルタイムに収集し、摩耗し交換時期となった刃の振動の状態になった場合に交換のためのアラートを送ることも可能です。
このように、IoTとセンサーを用いて、メンテナンスの最適化を行い、メンテナンスコストの削減と作業者の安全や作業効率の向上を図るDXの取り組みも可能となります。
中小製造業DXのパターン5:稼働状況の監視
工場内の機械装置に積層灯を付属させていることはよくあります。この積層灯は機械の異常を直ぐに目で確認することのできる非常に便利なツールです。しかし、人が工場内にいなければ、いくら積層灯でアラート(多くの場合、赤色の点灯や点滅)を警告しても確認することができずに、機械装置の異常を見逃すことになってしまいます。
このような場合に、それぞれの積層灯に光を検知するセンサーを付属させ、IoT技術により中央のPCやサーバーにデータを送信させる仕組みを作れば、24時間、人がいなくとも積層灯を監視することが可能です。また、積層灯が異常時の点滅を行った場合に、その状態を検知したセンサーデータをPCやサーバーがキャッチし、担当者にメールやLINEでアラートを送ることも可能となります。
この仕組みがあれば、これまで夜間稼働時に従業員をそれぞれラインに配置しなければならなかった工場も、遠隔地でアラートが鳴った場合のみ対応する担当者を配置すればいいことになります。これにより、単にIoTにより遠隔監視ができるだけでなく、人材不足への課題解決にもつながり、まさに製造業DXの典型例と言えるでしょう。
まとめ
以上、製造業DXの典型例を見てきました。この例以外にももちろん製造業DXの方法はいくつもあると思いますが、限られた予算の中で最大限の効果を出さなければならない中小製造業者にとっては、上記の5つの例は、他社でも導入が進み成果も上がっている比較的取り組みやすい事例といえます。
もし、あなたの工場でもDXへの取り組みを検討されている場合、今回ご紹介した事例をご参考に、検討して見てはいかがでしょうか?
また、当社でも無料のIT相談もお受けし、開発のご依頼も全国にてお受けしております。お気軽に、ご相談ください。
