システム開発における見積もりのポイント
皆さんこんにちは!㈱スクラムソフトウェアの製造業DX担当.Aです。今回は月2回の当社で実施している「製造業DX勉強会」で触れた「製造業におけるDX」についてお伝えしたいと思います。
システム開発における見積もり
ユーザーにとって、システムを開発する上で、まず初めに気になるのことの一つが費用だと思います。もし、欲しいシステムが既製のパッケージ製品であれば、メーカーに問い合わせれば比較的簡単に見積もりを取得することができるでしょう。
ただし、自社が必要とする機能をゼロから作るようなシステムの場合、正式見積もりはすぐに出ることはなかなかありません。自社でできる概算見積もりの方法と、システム開発業社への正式見積もりの取得方法について、ご説明したいと思います。
自社でできるシステム開発の簡易見積もり方法
システム開発における見積もり手法はいくつかありますが、どの手法も一定程度のシステム開発に関する専門知識が必要です。システム開発について専門的な知識がないエンドユーザー企業がそれら見積もり手法を使用するには、ハードルが高すぎます。また、エンドユーザー企業にとって、欲しい情報はそのようなシステム開発における見積もり手法を駆使した見積額ではなく、それほど精度が高くなくとも簡易的にすぐに出る概算見積もりだと思います。
そのような場合、エンドユーザー企業が比較的簡単に利用できる簡易的な見積もり手法が類推法です。これは過去の類似したシステムにおけるコストから類推し、概算見積もりを算出する方法です。
例えば、以下はこれまでの経験則で中小ソフトウェア開発業社に発注した際の1000万円未満の小規模システムの相場感になります。
- 予約管理システム: 約250万円〜
- 機能: 顧客の予約を受け付け、管理するシステム。オンラインでの予約、予約変更、キャンセル処理などが含まれます。
- ECサイト: 約250万円〜
- 機能: 商品の展示、カートシステム、オンライン決済、顧客管理、注文管理などの機能を持つ電子商取引サイト。
- 生産管理システム: 約350万円〜
- 機能: 製品の生産プロセスを管理し、在庫管理、生産スケジューリング、品質管理などを行うシステム。
- 顧客関係管理(CRM)システム: 約400万円〜
- 機能: 顧客データの管理、販売機会の追跡、マーケティングキャンペーンの管理、顧客サービスのサポートなど。
- 在庫管理システム: 約400万円〜
- 機能: 在庫の追跡、発注管理、在庫レベルの最適化、レポート作成など。
- 人事管理システム: 約450万円〜
- 機能: 従業員情報の管理、給与計算、勤怠管理、採用管理など。
- 会計システム: 約500万円〜
- 機能: 財務管理、会計帳簿の作成、予算管理、レポート作成など。
- 医療記録管理システム: 約750万円〜
- 機能: 学生の成績管理、出席管理、時間割管理、教員情報管理など。
- 不動産管理システム: 約350万円〜
- 機能: 物件情報の管理、賃貸契約管理、入金管理、メンテナンス記録管理など。
- 物流管理システム: 約400万円〜
- 機能: 配送管理、在庫管理、輸送ルート最適化、車両管理など。
- オンライン教育プラットフォーム: 約600万円〜
- 機能: コース管理、受講生管理、テスト・評価システム、コンテンツ配信など。
- AI機能付きマーケティングオートメーション:約900万円〜
- ベースとなる顧客管理システムの開発に加え、自動で顧客へのメール送信、チャット機能、AIによる顧客への商品レコメンド機能など。
これらの相場感についてはあくまで平均的な機能のみに限定したものです。追加機能で複雑な機能を追加した場合、デザイナーにデザインを依頼した場合、WEBシステム+アプリ開発など、複数デバイスに対応した場合など、別途費用は増加していきます。また、上記の例は中小ソフトウェア企業を例に取っていますので、規模の大きなベンダー等に依頼した場合は例えば1.5倍くらいの費用増となることも想定されます。
これらの見積もりを参考に、自社のこれから開発したいシステムがどれくらいの費用になりそうなのか、概算として見積もりをして見てください。
システム開発企業への見積もり依頼方法
システム開発の見積もりは時間がかかる・・・
自社で概算見積もりと、おおよその予算どりができた段階で、システム開発企業へ見積もりの依頼を行います。ただし、多くのシステム開発企業においては、ホームページやテンプレートの決まったECサイトではない、ゼロから機能を作り込むようなシステム開発については、見積もりだけの依頼はお断りされることが多いと思います。
理由としては、見積もり作業はシステム開発業社はエンドユーザーの要望する機能をかなり詳細にヒアリングし、必要な技術や技術者を想定しながら算出する必要があり、かなりの労力を要するからです。その代わり、一般的には、システム開発業社は見積書に加え、エンドユーザーが希望するシステムについての提案書も一緒に提出する場合が多いです。それだけの作業を踏まえて見積もりは提出されるものということですね。
相見積もりはやっていい?
そのようなことから、見積もり依頼をする企業には、ある程度の発注意思を示すことは重要だと思います。また、しばしば、「相見積もりはしていいの?」というようなご質問を受けることがありますが、個人的な意見としては、「発注意思があり、かつ、金額次第で発注することを前提に、断りを入れておけば、相見積もりも構わないのではないか」と考えています。中には相見積もり自体をお断りする業者もあるにはありますが、エンドユーザーのことを考えれば、相見積もりは構わないと考えています。
見積もり依頼で必要なこと
見積もりを依頼する際は、どのような機能が必要なのか、あらかじめ社内で整理しておくと、見積もりもスムーズに提出することが可能です。
この際、システム開発においてはRFP(Request for Proposal、提案依頼書)というものがあります。これは、エンドユーザー側で、システム開発業社「このようなシステムを提案してくださいね」と依頼するための文章です。この文章の目的は、必要な要件をエンドユーザー側で定義し、文章で過不足なく伝えるためにのものです。もちろん見積もりにおいても、機能の不足や不必要な機能の搭載を排除し、目的に合致したシステムの見積もりを作るためにも利用可能です。
以下で、見積もり依頼で記載すべきRFPの内容を列挙してみます。
見積もり依頼で記載すべきRFPの内容
- 会社概要
- システム導入計画の背景
- システム導入の目的
- 希望するスケジュール
- 自社の体制
- 希望するシステムの機能一覧
- 機能に関する要望
- 運用場面での要望
- 教育面での要望
- その他の要望
これらの内容を整理し、システム業者に投げてみるといいでしょう。
提出されたシステム開発見積書で確認すべき点
システム開発業社から提出された見積書に対しては、次の点を重点的にチェックしましょう。
1. 見積もりの詳細
- 見積もりには、すべての機能が詳細に記載されているか。
- 各項目のコスト内訳が明確か。隠れた費用や不明瞭な項目がないか。
2. 金額と予算とのギャップ
- 提案された金額が予算内に収まっているか。
- コストが予算を超えている場合、あるいは概算予算とギャップがある場合、その理由と必要性を明確にする。
3. 時間枠と納期
- プロジェクトの開始日と完了予定日が記載されているか。
- 提案されたスケジュールと納期は現実的で、目的に合致しているか。
4. 支払い条件
- 支払いスケジュール: 支払いのタイミングや支払い方法が明記されているか。
- 分割払い: 大規模なプロジェクトの場合、分割払いの条件が合理的か。
5. 保証とサポート
- 保証期間: システムに関する保証期間や保証内容が記載されているか。
- アフターサポート: プロジェクト完了後のサポートやメンテナンスサービスが提供されるか。
6. 法的要件と契約条件
- 契約条項: 法的な要件や契約上の義務が適切に記載されているか。
- 知的財産権: システムの所有権や著作権に関する条件が明確か。
これらの項目をチェックして見ましょう。また、疑問点がある場合はシステム開発事業者に率直に言ってみるようにしましょう。ここで、誠意ある受け答えができなければ、その業者は残念ながら、今後長らくお付き合いするシステム開発パートナー企業として、ふさわしくないと言えます。
以上が、僕と当社が考えるシステム開発に関する見積もりのポイントです。あくまで、当社の独自意見であり、すべての場合に当てはまるということではありませんが、参考にしていただければ幸いです。
また、当社でも無料のIT相談もお受けし、開発のご依頼も全国にてお受けしております。お気軽に、ご相談ください。