組込みエンジニアがマイナンバーカードに思うこと

私はそろそろ情報処理業界やソフトウェア開発業界から引退を考えている年寄エンジニアです。エンジニアはどうあるべきか、など日頃考えている事、感じた事をとめどなく書いてみようと思います。

このコラムを読まれた方の中には、違う意見や考えをお持ちの方もおられると思います。その時は無視して頂ければ幸いです。

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マイナンバーカード

今は2023年(令和5年)です。皆さんはマイナンバーカード(マイナカード)を取得しましたか?私は取得し、使用できる病院や薬局では、健康保険証として使っています。また、コンビニで住民票や戸籍謄本等の取得にも使用しています。

このマイナカードですが、2022年の夏頃から誤登録が報じられ始めたと思います。それ以来マスコミを中心に、どこそこで何件の誤登録とか、健康保険証との紐づけが何件間違っている、とか、はたまた国民(「国民」とはいったい誰の事?)の合意が得られていない、とか、マイナカードのマイナス面ばかりを強調する論調がほとんどです。

最近の西日本新聞でも既存の健康保険証の廃止とマイナカードへの一本化についての記事が掲載されていました。その見出しは、

マイナ一体化 “強行”に懸念

でした。内容も不安を煽る識者のコメントを掲載するのみで、推進または擁護する識者のコメントは何もありませんでした。

組込みエンジニ的視点によるマイナンバーカードドタバタ劇

実は、このマイナカードにまつわるドタバタ劇を見るにつけ、日本のマスコミはどうして、1か0か、はたまた、白か黒か、みたいな偏った発想しかできないのか不思議でなりません。確かに、今のマイナカードの制度設計は、システム屋さんから見るとはっきり言ってダサいとしか言えません。このままではマイナカードはジリ貧になりそうです。

随分と前になりますが、国内の某通信機・コンピューターメーカーの課長が新しい装置開発に際し発した言葉に「市場にリリースするシステムに不具合が発生するなどありえない」というのがありました。確かにそうかもしれませんが、それを実現するためには膨大な試験と時間(もちろんそれに伴う開発資金)が必要になります。

海外における最新技術の導入ケース

これに対し、海外のアプローチは全く違うようです。例えば、Googleが提供するスマートフォンやタブレット向けAndroid OSは、初版の質は劣悪でした。Android OS自体がこなれていないし、そのOSを搭載したAndroidフォンも不具合だらけで、最初に触った時は『よくこんな品質のものを製品として提供するな~』と思ってしまいました。

しかし、Googleは継続的にAndroid OSを改良し、今では品質でもAppleのiOSに肩を並べて(もしかしたらiOSより優れているかも)います。そして、何時の間にかモバイル端末向けOSでは、過半数のシェアを獲得しているのです。

PC向けOSのLinuxも似た経緯をたどっています。最初は一部のマニアが無償公開されたUnix OSとして使い始め、その後有志が使いやすいように継続的に改良を重ねた結果、今ではPCをはじめとしたさまざまなデバイス向けOSとして、確固たる存在感を放っています。

日本における最新技術への反応

なぜ、Android OSやLinuxは成功したのかを考えると、マイナカード導入にまつわるドタバタ劇は滑稽としか思えません。全く新しいシステムを開発、導入する場合、ある程度の障害が発生することは当たり前です。使用者は障害をある程度許容し、運用者は使用者に対し説明責任を果たしつつ被害が発生した場合の保障を誠実に行い、開発者は対象となるシステムのたゆまぬ改善を行う必要があります。

新聞を代表とするマスコミには

  • 事実を正確に報道する(これが一番重要)
  • 自社の論説であることを明確にして意見を掲載する
  • 識者に意見を仰ぐ場合は、賛成意見、反対意見、参考意見を偏りなく掲載する

であって欲しいと思います。

本コラムの最後になりますが、マイナカード絡みのマスコミの報道やドタバタ劇を見た海外の識者が、嘲笑気味に「現行の健康保険証の運用の実態など何も論評せずに、マイナカードに対し『一つだめだから全部だめ』みたいな報道姿勢は我が国では考えられない」とコメントしていたことを申し添えます。

ちなみに、当社では組込み開発を始め、様々なシステム開発の相談、設計、実装を全国対応で行なっています。無料相談も実施していますので、お気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

株式会社スクラムソフトウェアで、長年の組込み開発エンジニアとしての経験から、実際の開発業務と若手エンジニアの技術指導を行っています。

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