温水器修理から考える組込みシステムの契約の話

私はそろそろ情報処理業界やソフトウェア開発業界から引退を考えている年寄エンジニアです。エンジニアはどうあるべきか、など日頃考えている事、感じた事をとめどなく書いてみようと思います。

このコラムを読まれた方の中には、違う意見や考えをお持ちの方もおられると思います。その時は無視して頂ければ幸いです。

目次

我が家に太陽光発電設備を導入

我が家に太陽光発電設備を設置した時にオール電化に切り替えました。給湯もガス給湯器から電気温水器に切り替えです。

この電気温水器ですが、メーカー保証期間は5年間でした。家電製品は、保証期間が終了した頃を狙いすましたように不思議と故障します。ご多分に漏れず、この給湯器も5年経過した直後に故障しました。中枢部分の故障でしたので、修理代は5万円ほどになり、びっくりしました。

その後も別の部分が故障し、やはり修理代に数万円を要しました。これだけ故障すると、電気温水器への切り替えで得したのか疑問が生じます。むしろ損したのではないかとも思えます。

9年目に突入した給湯器

給湯器を設置して9年目に入った頃でしょうか、今度は水漏れが始まりました。『またか~』と思いつつ、仕方ないのでメーカーに修理を依頼しました。サービスエンジニアが到着し故障状況を確認後に、修理代金の見積額が提示されました。その額は約17,000円ほどでした。修理しないと給湯器は使えません。『相変わらず高い修理代だな~』と思いつつ修理を依頼しました。

暫くすると、「修理が終わりました」と報告が来たので、水漏れが止まったことを確認して修理代17,000円を支払いました。

ところが、暫くすると全く同じ水漏れが再発したのです。再び修理依頼すると同じサービスエンジニアがやってきました。不具合の状況を見て前回と同じ症状であることを私と確認しました。そのうえで、サービスエンジニアは故障個所を改めて探し始めたのです。

暫くすると、どこそこのパッキンを交換したので改善するかどうか暫く様子をみて欲しい、と言われ、しぶしぶですが様子を見ましたが、やはり不具合が発生します。このようなやり取りを数回繰り返し、やっと本当の故障個所を突き止めました。

サービスエンジニアの対応に憤る

サービスエンジニアから不具合状況の報告を受けましたので、これでやっと納まるかも、と一安心した直後に、「追加の修理代5万円をお願いします」と言われたのです。これにはさすがにびっくりです。最初に不具合状況を確認し、その時に修理代金17,000円で合意し、既に支払っているのに、その時の修理は間違いだったので、追加で5万円を請求します、と来たのです。

この対応には怒りさえ覚えました。この温水器メーカーは日本人なら誰でも知っている、一般的には一流メーカーです。そのメーカーがこんな対応をするのか、と本当に呆れました。このままでは支障があるので、修理代金の合意は先延ばしにして、とにかく修理だけはして貰いました。その修理によりその後の水漏れは無くなりました。

さて、今度は修理代金の取り扱いです。個人の立場の私と超大手メーカーとの直接交渉となると分が悪くなります。そこで、自宅を建て、そして太陽光設備を設置してくれた工務店(この工務店も大手ハウスメーカーに属する住宅部門です。問題の電気温水器は工務店が選定したものでした。)に仲介に入って貰いました。工務店に事情を説明すると、今回の温水器メーカーの対応は問題で、通常の修理対応から逸脱することを理解してくれました。その後、工務店が温水器メーカーと交渉し最初の17,000円のみの支払いで和解しました。

組込みシステムの契約について考えるところ

私たちのシステム開発の分野での請負契約に基づく成果物に対する補償は、納品後一年間の瑕疵担保責任が一般的だと思います。つまり、納品後一年以内に不具合が見つかった時は無償で修理する、というものです。今回の電気温水器では製品保証の5年間に相当するものです。

そして、保証期間経過後の不具合は、その都度不具合の原因を調査し、修復に要する費用の見積を提示し、合意の後対応する、というのが普通の流れです。対応後同じ障害が発生した場合、つまり最初の対応が不十分、または見込み違いだった場合は無償対応します。(自分の技術力不足を恥じるだけで、顧客や第三者に責任転嫁できません。)

これに対し、その時の温水器メーカーの対応は、今までの私の常識とは相容れないものでした。

このように、組込みシステム開発に際して、請負契約書で成果物に対する責任範囲を明確にすることは非常に重要です。知人だからと口約束だけで、ちゃんとした契約書を交わさずに開発、納品することはその後の問題発生時に酷い目に会う可能性が高くなります。今回の温水器メーカーなどのように相手が強い立場だった場合はなおさらです。

こちらが顧客として委託する場合も同じです。納品物に瑕疵があっても対応してくれない可能性が高くなります。

組込みシステム開発を受託、または委託する場合、必ず請負契約書を交わしましょう。(もちろん請負契約書の内容を熟読し、内容に疑問がある場合弁護士などの専門家にチェックして貰った方が安心です。)

今回は工務店に間に入って貰ってひとまず事なきを得ましたが、その後、同機能、同価格帯のものが他社にあればそちらを選択し、温水器メーカーの製品は避けるようになったのは言うまでもありません。

ちなみに、当社では組込み開発を始め、様々なシステム開発の相談、設計、実装を全国対応で行なっています。無料相談も実施していますので、お気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

株式会社スクラムソフトウェアで、長年の組込み開発エンジニアとしての経験から、実際の開発業務と若手エンジニアの技術指導を行っています。

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