組込み開発とエセコンサルタントの話

私はそろそろ情報処理業界やソフトウェア開発業界から引退を考えている年寄エンジニアです。エンジニアはどうあるべきか、など日頃考えている事、感じた事をとめどなく書いてみようと思います。

このコラムを読まれた方の中には、違う意見や考えをお持ちの方もおられると思います。その時は無視して頂ければ幸いです。

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あるオンラインシステム構築のサポート

ある地元大手小売店のリアルタイムオンラインシステム構築のサポートを頼まれました。来るものは拒まず、ということで快く引き受けました。依頼元はその小売店のシステム構築を請け負った国内大手ITベンダーです。ただ、他にもやらなくてはいけない業務が立て込んでいたので、週3日だけのサポート契約です。報酬は月単価90万円程度でした。

この月単価90万円は、発注したITベンダーの社内エンジニア単価からすると、相当高額だったようです。(窓口になってくれたマネージャーがうらやましそうにこそっと教えてくれました。)ただ、私の気持ちとしては『一般の誰もが知っている超大手複合企業に属するこの会社で90万円が高額なの?』と思ってしまいました。ただ、週5日に換算すると100万円を超えますので、高額だったのかもしれません。

顧客が依頼しているコンサルタント

実は、この大手小売店は、基幹システムの刷新に伴い、経営戦略も刷新すべくコンサルタント数人を雇っていました。コンサルタント一人の月単価は300万円から500万円です。(小売店の知り合いの部長から聞いた単価です。)コンサルタントが本当に有益なコンサルティングを行う場合、彼らの単価は決して高いものではありません。(実際、私が勤めていたコンピュータメーカーの立場でトップレベルの顧客システムの構築を行う場合、その程度の報酬を請求していました。ただ、自分の懐にそのまま入らないのは寂しかったのですが・・・)

そのコンサルタントが、私の事務所を訪ねてきました。『いったい何の相談なんだろう?』と訝っていると、現在構築中のリアルタイムオンラインシステムを更から開発できないか、という相談でした。大規模リアルタイムオンラインシステムのためのトランザクションプロセシングカーネル(TPカーネル)やトランザクションプロセシングモニター(TPモニター)を一から作れないか、と聞くのです。

怪しいコンサルタントの知識

彼らの話を聞いて、『この人たちは本当に動くものを作ったことが無いな』と思ったことを記憶しています。使い物になるTPカーネルやTPモニターを開発するための技術力、資金、期間がどれだけ必要なのかを、彼らは知らないのです。(「達人が書いたプログラム」で触れたTPモニターでさえ一度稼働させたTPモニターを、期待通りのパフォーマンスを達成できない、とスクラップ&ビルドで作り直しています。)

彼らはコンサルタントですので、夢を語る人種かもしれません。夢を語って人をその気にさせる仕事であり、顧客はその夢にお金を払っているのかもしれません。しかし、全く現実味が無い相談を私に向けてくるのです。その時は、私から彼らに、いったいどのくらいの開発費が掛かるのか理解しているのか、開発するためのお金と期間はあるのか、などを逆に質問しても、彼らから何の回答もありませんでした。

結局、彼らは自分達の見通しの甘さを思い知らされて帰っていきました。その時、私に対するコンサルティング料は一銭も払っていません。(人に相談するんだったら金を払え、と言いたくなります。)

組込みエンジニアと相談先

皆さんも人に何かを相談することがあるでしょう。その時、相談する内容に従い報酬を払うのは当然です。よくタダで相談して情報だけ盗んで逃げるように去っていく人を見かけますが、感心できません。(「自分のことかも」と思っているそこのあなた!、長い目で見ると『信頼できない図々しいやつ』と思われて、損をするかもしれませんよ。)

そして、受けた助言を評価する目を養うことも大切です。私は一歩引いて(別の言い方なら「冷めた目」で)見ているので、調子を相手に合わせながら、『彼が言っていることは本当か?』と自問しながら聞いています。

さて、この地元大手小売店のその後ですが、基幹システムは私がサポートしたITベンダーにより無事稼働することができました。しかし、時代の趨勢には勝てず、後に東京に本社がある日本を代表する大手小売店グループに買収されてしまいました。コンサルタントに数億円は払ったと思いますが、それに見合ったリターンが有ったのかは今となっては分かりません。

ちなみに、当社では組込み開発を始め、様々なシステム開発の相談、設計、実装を全国対応で行なっています。無料相談も実施していますので、お気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

株式会社スクラムソフトウェアで、長年の組込み開発エンジニアとしての経験から、実際の開発業務と若手エンジニアの技術指導を行っています。

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