組込み開発と安全性

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組込み開発エンジニアにとって、安全性に関する基準を持つこと

私は長年、組込み開発に従事してきたベテランエンジニア.Tと言います。組込み開発を中心に、ソフトウェアエンジニアはどうあるべきか、など、日頃考えている事や感じた事をとめどなく書いてみようと思います。

記事を書いた人…

組込み開発エンジニアの皆さんなら、何かしらのモノを何時も作られていると思います。
モノを作る時その品質にどのような基準をお持ちでしょうか?

皆さんには、組込み開発を行う上で、第一に安全性に関する基準を持って貰いたいと思います。

組込み開発の安全性を考える上で、一つの例を示します。

ちょうどオートマチックトランスミッション(AT)搭載車による暴走事故がニュースで取り上げられ始めた頃です。


ある自動車メーカー系販売ディーラーのサービスエンジニアと話しをしていて、「自分はAT車は嫌いなんだよね」と言うと、そのエンジニアが目を丸くして「え~っ、どうして嫌いなんですか?」と聞き返してきました。

その問いに以下のように答えました。

  • マニュアルトランスミッション(MT)車での暴走って聞いたことがない
  • MT乗りは、とっさの時は反射的にクラッチペダルを踏むので、パニックになっても暴走することは考えにくい
  • (その当時の)AT車は、ブレーキとアクセルを踏み間違えてパニックになり暴走し始めると、制御が効かなくなる
  • 今の車は電子制御式燃料噴射方式(EFI や EGI)なので、アクセルを目いっぱい踏み込んだフルスロットル状態を検知すれば、容易にエンストや徐行させることは可能なはず
  • 人間工学を研究している自動車メーカーがどうしてこのような最低限の安全対策を取らないのか理解できない

このように答えたのですが、そのサービスエンジニアは「そんな話、初めて聞きました。」と言って感心していました。
でも、長年、組込み開発に従事してきた私からすれば、歩行者やドライバの安全を第一に考えるべき自動車メーカーが、素人でも考えることを考慮していない(少なくともユーザーと接触する現場のサービスエンジニアを教育していない)、ということに、逆にびっくりしてしまいました。

そのエンジニアには、AT車でアクセルを目いっぱい踏み込んだ時の安全対策をなぜ取らないのかの理由があれば教えて欲しい、と言っていますが、未だに回答はありません。

今でこそ多くの組込みセンサーを搭載したセイフティカーと言われるAT車が増えてきましたが、それ以前にも出来ることはたくさんあると思います。
皆さんには、自分が携わった組込み開発プロジェクトで実際に出来上がった「モノ」がどう使われるのかを想像して、できる安全対策は積極的に行ってほしい、と思います。

組込み開発の安全性を考える上で、もう一つ例を示します。

随分依然になりますが、大型オフロードカーに取り付けるカンガルーバーが流行っていました。日本国内でこんなごついバンパーは不要だろうに、と何時も思っていました。

カンガルーバーの例
wikipediaより引用(著作権:Tokumeigakarinoaoshima, CC BY-SA 4.0 https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0, ウィキメディア・コモンズ経由で)

そうこうする内に、ヨーロッパでカンガルーバーが禁止された、というニュースが届いたのです。理由は簡単で、交通事故で人に接触すると致命傷に至りやすいからです。国内メーカーも、カンガルーバーの危険性については当然認識していたはずです。これで国内でも当然禁止されると思いました。

ところが、そのニュース後も、国内ではオフロードカーにカンガルーバーを装着したコマーシャルが流れ続けました。実用性は全くない単なるかっこつけです。そのCMを見て日本の自動車メーカの安全意識の低さに愕然としたのを覚えています。

日本人の特徴は、HP等で多く紹介されているようなので、ここでは触れませんが、この対応をみると – 自分では決められない – 人と同じことをしていれば、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」的に、おかしいと思いつつ迎合してしまう などの特徴が現れたのではないでしょうか?

元を正せば、国内でカンガルーバーを装着したオフロードカーを提供すべきではなかったと思います。 皆さんは、この時のメーカーの対応をどう思いますか?組込み開発エンジニアとしてどうすべきだと思いますか?

ぜひ、皆さんには、組込み開発エンジニアとして、自分の考える、組込み開発を行う上で必要な安全性に関する基準を持っていただきたいと思います。

ちなみに、当社では組込み開発を始め、様々なシステム開発の相談、設計、実装を全国対応で行なっています。無料相談も実施していますので、お気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

株式会社スクラムソフトウェアで、長年の組込み開発エンジニアとしての経験から、実際の開発業務と若手エンジニアの技術指導を行っています。

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