組込み開発における、独自手法 vs 標準手法
私は長年、組込み開発に従事してきたベテランエンジニア.Tと言います。組込み開発を中心に、ソフトウェアエンジニアはどうあるべきか、など、日頃考えている事や感じた事をとめどなく書いてみようと思います。
担当したリアルタイムOSの組込み開発
ある装置の仕様検討のための打ち合わせを行った時のお話です。組込み開発プロジェクトに新進気鋭の女性エンジニアのAさんが参画していました。
アプリケーションとドライバ間でデータの受け渡しと同期制御のやり方について、組込み開発における技術的な検討を行っていました。OSは市販されている一般的なリアルタイムOSです。Aさんは以前にも同OSで独自の手法によりアプリケーションとドライバ間でデータの受け渡しを行った実績があり、今回もそのやり方を踏襲したい、と提案がありました。
組込み開発における、独自手法 vs 標準手法
それに対し、独自手法は将来の拡張性に乏しいため問題がある、使用するリアルタイムOSはファイルシステムを標準で提供しているため、そのファイルシステムの機能を利用して実現する方がよいのではないか、と私は提案しました。Aさんは経験が浅いこともあり、ファイルシステムで欲しい機能を実現できることを知らなかったのです。
独自手法とOSによる標準手法のどちらが良いかを暫く議論しました。彼女の力説を私が理路整然と論破することが続くと、Aさんはとうとう泣き出してしまいました。
依頼元の組込みエンジニアを泣かせてしまった!
男性は若い女性の涙にはめっぽう弱いのです。女性エンジニア、しかも依頼元(発注元)の組込みエンジニアを泣かせてしまった。
良かれと思って提案した標準手法でしたが、依頼元エンジニアが泣いてしまった事もあり(説得するのが面倒くさくなったこともありますが)、独自手法を踏襲することにしぶしぶ同意しました。
技術本部マネージャーの鶴の一声
その時です。実は装置の企画から販売戦略立案まで行う技術本部のマネージャーもその会議に参加していました。マネージャーはAさんと私の議論をそれまで物静かに聞いているだけでしたが、突然、「ちょっと待ってください。」と話に割り込んできました。「お二人の話を聞いていましたが、客観的に見て技術的には標準手法で実現した方が正しいと判断できます。従って、今回は標準手法を採用してください。」と裁定が下されたのです。
組込み開発プロジェクトで立場の弱い開発受託者
このAさんは立派に成長して、この後素晴らしいご活躍をなさいました。でも、やはり仕事中に泣くのは良いとはいえません。
また、皆さんも開発を委託する側、または受託する側の立場で仕事することが多いと思います。より良いシステムや製品を最終的に提供することが目標ですので、仮に受託する立場であっても、委託者からの提案や指示よりもっと良いと思われるやり方があれば、積極的に委託者に提案してください。逆に、委託する立場なら、受託者から自分と異なるやり方の提案があれば、積極的に議論して、より良いと思われるやり方に改善、改良して欲しいと思います。
このような技術的な議論を重ねることで、組込みエンジニア同士としてより信頼関係が深まると信じています。
ちなみに、当社では組込み開発を始め、様々なシステム開発の相談、設計、実装を全国対応で行なっています。無料相談も実施していますので、お気軽にご相談ください。